走り続けるカウンセラー

信田さよ子さん、「いいよね」と言う人と「ウーンちょっと」と言う人が、わたしの周囲には半々くらい居る。わたしは「いいよね」と思っている人だ。信田さんはカウンセラー、臨床心理士。多分、DV関係の支援者なら、一度は聞いたことがある名前ではないだろうか。
わたしは最初、信田さんの講演から入って、それから著作を読んだ。カウンセラーとしての姿勢を、クライアントに対する考え方を実際に学ぶことができるし、どれも学術的でないのがうれしい。最近、『依存症臨床論』『アディクション臨床入門』を立て続けに読むことができた。いつもそうだが、彼女の本は読み始めるとグングンひきつけられてしまう!
『アディクション臨床入門』の紹介文には、「医療モデルと司法モデルの境界線上で、アディクション臨床とともに走りつづける臨床家の思想遍歴と臨床美学を一挙公開!」とある。
信田さんは大学院に在籍しながらアルコール依存症の病院に非常勤で勤めたのが、アルコール依存症との出会いだったという。その経験から、精神科医はアルコール依存症者を断酒させることができないと感覚的にひらめいた。しかし、精神科医療の中での心理職というのは、アイデンティティ・クライシスに陥りやすい。信田さんも無力感に襲われた。そのあたりから、確信をもって心理職の道を邁進されてきたように思う。恩師の「医者にできないことをやりなさい」という言葉を反芻することもあったのだろうな、きっと。
50を目前に、原宿カウンセリングセンターを設立し、カウンセラー十数人を率いる、企業で言えば取締役となって、センター運営の責任を背負った。他の著書では、クライアントがセンターに来てもらうために、というような宣伝的な言葉も数多くみられる。カウンセラーが独立して開業するのはよくあることだけど、カウンセラーを何人も雇用するのは経営者の視点がないとやれない。カウンセラーの資質と経営者の力をあわせ持っていないと、とっくに破たんしていただろう。わたしがいつも感心するのは、そういう異質の仕事をこなしてしまう彼女の神秘性としか思えないパワーだ。『アディクション臨床入門』の巻末には、藤岡淳子(大阪大学大学院教員)さんとの対談が収録されていて、別の関心が首をもたげ、小さい字が気にならないくらい読み応え十分。


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